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おしごと通信【職人さんの技】

古き良きオーダーの技術は理に適ってる

先日お預かりした紳士のパンツ。

ご依頼は単に丈を短くするだったんですけど、裏を見ると、オーダー仕立てになっていました。

しっかりした生地、確かな技術、長年、着用されていただろうパンツは、ラインのゆがみもなく「さすが!」と思える一品でした。靴擦れだけは、さすがにぼろぼろになっていたので、新たに作り変える事として承りました。

どこと言って特徴のあるものではなくシンプルなシルエットです。で、裾を開いてみると縫い代に毛芯が貼ってあった!本当に久しぶりに毛芯を見ました。丁寧に3種類の手縫い技で、脇を止め・出来あがり線の位置を止め・布端を止めてある。一気に外すと分からなくなりそうだったので、片足づつ確認しながら毛芯を元の通りに移動しました。

この裾芯には3つの効果があります。まず、裾に重みが付き履いた時に裾が安定する。次に、縫い代全体がしっかりするので型崩れしにくい。そして前後のセンターラインが綺麗に入る。

私自身、専門学校時代の課題で取り組んだ『マンテーラー』つまり紳士仕立て以来、裾芯をキチンと貼ったことがあまりないように思います。昭和の紳士服職人さんは「テーラーさん」などと言われ、その技術力は、大変尊敬されるものでした。今もなお、現役で着用できるなんて・・・本当に素晴らしい!

たぶん、皆様のお父様やおじい様なら一着くらい、こんな手を掛けた特別な仕立てのスーツをお持ちかもしれません。もしも、ある程度サイズが合うようでしたら、是非、再生して着てもらいたいですね。きっと、暖かくて着易い逸品だと思います。

丁寧なお仕事ぶりを拝見して、私自身が大変勉強になりました。常に着心地とデザインの安定性を意識しながら、これからも一品一品に心を込めて仕上げていきたいと思います。