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おしごと通信【毛100%の謎】

毛100%なのにシワが取れない?

品質表示・・・どんな衣料品にも付けることが義務付けられているものです。クリーニング店も我々も、製品の扱いの目安にする大切な表示です。素材によって、スチームアイロンが使えないものや、クリーニング溶剤が異なるからです。

今回のご依頼は、紳士スラックスの普通の丈詰め。ダブルに仕立てるものでした。“レングス”と呼ばれる元々裾を始末してあるタイプで、掬い糸を外してみると、ミシンの掛る部分が芯補強されていた。しかも二重に・・ダブル仕上げなので、縫い代の幅をしっかり保てば大丈夫だろうと芯を貼らずに仕上げましたが、然程の問題はありませんでした。で、全体がシワだらけだったんで、仕上げアイロンをー!そこで問題が発覚しました。

『毛100%なのにシワが取れず時間が経つと、元に戻ってくる?』

通常では有得ないことなんです。

そこで、馴染みのクリーニング店主に相談しました。ブランド名を伝えると「あぁ!そこのはありますよ、ウチでもアイロンの再仕上げを頼みます。最初はびっくりしてお客様に謝罪してたんです。でも、どうもそういう素材みたいで、生地に張りがないしシワが戻らないんですよね。」と言われました。毛100%なのになぜ?疑問に思い実験してみたんです。

上が通常の紳士服地、下が今回の生地です。繊維をライターで焼いてみると、天然繊維なのか?何かを混紡してあるのか?かがわかります。合成繊維が混ざっていると、繊維の先が丸く縮れます。下のように・・・でも表示は『毛100%』

消費者庁のホームページを確認すると、100%の表示でも混用率の許容範囲があるようです。

『100%の場合:毛・・-3%以内・毛以外・・-1%以内(紡毛製品・空紡毛製品・・-5%以内(くず糸等を使用した紡毛製品又は空紡糸製品である旨を付記)』

確かに、3%以内なら他の繊維を混用可能なようです。今回のようにシワが取れない場合、多分アセテート系やアクリル系の繊維が混ざっているのではないかと推察します。表面の光沢、生地に張りがないなどの特徴と合致します。だから、製品化する段階で、あちこちが芯補強してあったんだろうと考えています。

一般的に紳士服地には用いないものなのかもしれません。そもそも婦人服のブランドだったハズですものね。今はボーダーレスで様々なメーカーが紳士婦人関係なく製品を作っています。我々は、製品をバラすところからお仕事が始まりますので「あれ?」ってことも多いです。製品加工も国内と海外の工場での仕立ての違い、婦人服工場と紳士服工場での処理の違いを感じることも、しばしばあります。たまには、こうして実験してみたりもします。

アトリエでは、出来る限り製品の仕立てに寄り添いながら、より綺麗な仕上がりを目指しています。