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お仕事通信「紳士パンツの幅詰め」

年々増える裾幅詰めのご要望

以前からよくご相談を受けていた紳士パンツの裾幅詰めのご要望。これが中々一筋縄ではいきません。

ここ数年紳士スーツのパンツの裾幅が狭くなっています。平均で約18cm~19cmくらいです。一昔前は20cm~22cmくらいが基準でしたので、比べると随分狭くなっています。この現象は、素材の高騰や材質の変化によるところが大きいのではないかと推察しています。もう皆様お馴染みになっている伸びる繊維の混紡がスリムなラインを可能にしています。

例えばゴルフの試合などを見ていても選手の皆様のボトムは身体のラインがしっかりわかるほど細身のシルエットが多い。それでも十分に膝を曲げたりクラブを振ったりできるのですから、多分伸びる繊維が混紡されているのだと思います。今はGパンに至るまで、伸びる繊維を使っています。だから裾幅が17cmとか18cmでも大丈夫なんです。

ご相談を受けるのは、やはり一昔前のパンツが多いです。冬場はウール夏場は麻や綿素材。そもそもウエストにタックの入っているものが多く、裾幅を詰めるにも限度があります。全体のバランスを考えて細めていかなければなりません。脇のポケットから7~8cmの位置は詰められないので、腿はあまり入りません。内股は股上にどの位余裕があるのかが気になることろです。伸びない素材で裾幅を詰めすぎると、ふくらはぎのところで引っかかってしまいます。その点も考慮の必要があります。

ご自身でチェックして頂く場合は、まず希望の裾幅・膝位置でどの位詰められるか・股上の深さ・ヒップの余裕です。それが全体のデザインで可能かどうかはお品物を拝見したからの判断になります。

今回加工させて頂いたパンツは、インポートのカジュアルパンツ。股の縫い方やポケットの切り方がGパン仕様でした。 元々細身のお客様なので裾幅18cm仕上げ・膝で4cm詰め・外側は腿で1.5cm・内股はワタリで1.5cm・股上0.5cmで詰めました。丈はそのままです。確かにスッキリしたシルエットになりました。ヒップはほとんど入れることができないので、この程度が限界でした。長年ご利用頂いているお客様で、ある程度体型が判っているから少々大胆に詰めることが出来ました。

スーツのパンツになると上着との兼ね合いがあったり、ポケットの仕様が様々あったりしますので、あまり極端には詰められない場合があります。オーダーパンツの場合は、さまざまなテクニックを使っているため追加料金が必要な場合がございます。尚、タックのあるパンツをノータックにする補正は残念ながら受け付けておりません。

出来ることは限られますが、その範囲で可能な限りご要望にお応えしたいと思っておりますので、お品物をご持参の上、ご相談頂けると嬉しいです。一昔前のパンツは素材的にも縫製の面でもクォリティーの高いものが多いです。オーダーパンツは尚更のこと。多少料金は掛かっても、ちょっとシルエットを変えれば、また新たなイメージで着用して頂けるとのではないかと思っております。