袖口の裏地破れを解消しましょう。
お仕事で頻繁に着用したり、お気に入りで長くお召し頂いているコートやジャケット。素材や仕立ての良いものは、オモテから見ても全く劣化がなかったりします。が!裏地は摺れたり破れたり・・・直接肌にあたる部分や着用で力が掛かるところは、どうしても経年劣化します。勿論全体を丸ごと裏地交換することもできますが、やはりお値段も時間も掛かります。手早くお手頃価格で何とか~とご要望がある場合は、部分交換をオススメしております。
基礎知識として、裏地は伸びがありません!(トリコット系のそもそも伸縮性のある裏地は別ですが)オモテ素材の形状を守り美しいシルエットを導く為に、また着脱の際に滑りがよくストレスなく着用して頂くために、ジャケットやコートには裏地を張って裏打ちします。だから伸びたら困ったことになるんです。
全体を少し広めに長めにして身体の動きに柔軟に対応させるのが、裏地の扱い方の基本ですが、インポートと日本製では概念が違うようです。日本の製品には、その余裕をあらかじめ折り込む“キセをかける”という手法が一般的なんです。画像の折込みの部分がキセです。インポートの裏地は、キセのないものが多いです。縫い代も両側に折り広げてあったりします。日本では一般的に片側に折ります。こうすることで、生地に遊び(余裕)ができます。
今回承ったコートはイタリア製。裏地にはキセがないので、余裕分を「生地が余ってる」と思われたご様子でした。スレが気になって袖口で裏地を摘んで止めつけて・・結果、裏地が裂けてしまいました。こうなってしまったら、裏地を取り替える以外に方法がありません。なので、部分交換をオススメしたんです。
半分くらいのところで大胆にカットして、新しい裏地で下半分を製作して取り付ける作業です。勿論縦の縫い目にもキセをかけ、切り替え位置でオモテと軽く綴じて、裏地がずるずると落ちてこないように工夫しました。

袖口からのぞく裏地の様子をごらんください。全く支障はないと思います。今回は綾織の丈夫で光沢感のある裏地を選びました。コートそのものの持つ高級感も損なわずに加工できたと思っております。こうすれば、また少し長い期間、お気に入りのコートが楽しめると思います。まだ、着用する時期ではない夏だからこそ、じっくり取り組めます。一度、お手持ちのコートの裏地をチェックしてみてください。気が付かずにそのままクリーニングに出すと、破れが酷くなる場合もございます。補修はお早めに・・・